JRP年度賞

JRP年度賞は2009年4月の理事会で創設が決定されました。毎年、JRP会員のグループ企画展や地域の写真活動、個展、出版など優れた写真活動に対しておくられる賞です。各支部・会員・理事の推薦を受け、代表理事が選考を行い、総会または夏期セミナーで表彰しています。

 

 

2023年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 髙橋美保写真集 『MINDSCAPE in the woods 武蔵野・狭山丘陵』

■ 受賞理由

首都圏武蔵野台地の西北、古多摩川が削り残した東西11キロ南北4キロに及ぶ狭山丘陵を、約8年間撮影してまとめた写真集である。
巻頭の森の老いを感じさせる垂れ下がったカズラに続くのは、芽吹き始めたコナラ、次の水面に冬枯れの木の影を宿す湿地の小流れでは春の陽の光が輝いている。ページを繰ると、孵化を待つカエルの卵塊、セセリチョウ、アオサギ、カナヘビなどの森で命を育む姿、そしてカラスウリに攻めたてられるアズマネザサや、カズラに絡まれたコナラなど木々の静かな戦いの記録、最後は丘陵の麓まで押し寄せる人間の住まいの甍の波で終わる。
髙橋さんによると、ここに映った光景の三分の一はもう消えているという。髙橋さんは歩き回りながら過去の風景を気配として感じ、命の誕生と消滅を映像化した。
本書を年度賞として推薦したJRP理事の黒田勝雄さんは推薦理由を、風景を社会的背景の中で捉えた今までになかった風景写真集とのべている。
生命の循環とその変化を解説した文章と共に、森の不思議な魅力をMINDSCAPE、心象風景として語る、心にしみる一冊である。

代表理事 英伸三

■ 表彰状

■ 受賞のことば

この度は、JRP2023年度賞という望外の栄誉にあずかりまして、とても嬉しく思います。これも先生方、ゼミの写友や、写真の先達たちに支えていただいたお蔭と感謝しております。
写真集の舞台である狭山丘陵は、里山から少し登ってわき道にそれると、自然の不思議が感じられる場所があります。多様な植生・生態系を持った森林は、人の手を離れたとたんに太古を想像させるような自然の姿に還っていくのでしょうか。寒風吹き荒れる日でも森の中に入ったら、無風の暖かい場所があり、樹々の仲間になったような気がします。そして、周りを調べていくと、歴史・地勢・自然現象等についての知見の扉が次々と開いていきます。一つのことを長く続けていると、見えてくることが沢山あります。
最近は、カメラ、現像などの技術的なことが進歩してきました。それでも、写真でしか伝えられないことがあります。これからも「何を撮りたいのか」を考えながら、写真を撮っていきたいと思います。

個人会員 髙橋 美保

 

2022年JRP年度賞

個展・出版物

特別賞 小倉隆人写真集 『ヨコスカ、工業地帯、足尾、東京湾 1970 〜 2015 同時代を見つめて』

■ 受賞理由

作者の小倉隆人さんは、JRP 草創期の1970 年、20歳でJRPに入会、始まったばかりのJRP写真塾に参加して、何を撮るか、写真で何ができるかという、写真に対する基本姿勢を学んだ。そして翌年には審査の厳しいことで知られた銀座ニコンサロンで個展《基地の町「ヨコスカ」》を開催した。その後、川崎市の工業地帯、開発と荒廃が同時に進行する東京湾沿岸、公害の原点である栃木県の足尾銅山跡に通い、風景の中に絶妙に人物を配しながら、日本社会の今を撮り続けた。
本写真集を通観すると、彼の資質ともいえる善良さ、やさしさによる叙情性が、殺風景な埋立地や無機的な工場建造物の光景に、何か心を和ませる暖かな空気を生み出しているのを感じる。そしてそれが厳しい現実を認識させる力にもなっているのである。2015年までの45年間にわたる作品群をまとめた本書(A5判 252ページ 236点)には、そういった表現が一貫しており、そこから時の流れによって変わるもの、変わらないものも 見えてくる。長期間撮りためた写真を、写真集としてまとめて次世代に残すことの大切さを改めて痛感した。
JRP会員諸氏一人ひとりが、情熱を燃やして写真活動をした成果をどのような形であろうと、まとめる作業に取り組んでほしいとの願いから、小倉隆人さんの写真集を今回の特別賞とした。

代表理事 英伸三

■ 受賞のことば

JRPを冠したこの賞をいただきありがとうございました。写真集「ヨコスカ 工業地帯 足尾 東京湾1970~2015」を出版してから2年が経ちます。
1969年、私が19歳の時JRP徳島支部の藤井梵先生らに見送られて、写真を勉強するため東京へ出ました。東京での一年目は学園紛争に明け暮れ、二年目に JRP夏季講座の時にJRPに入会しました。JRPの先生方には「徳島の梵のところから来た」ということで大事にしていただいた思いがあります。その後JRP写真塾が始まり、英伸三教室に入れて頂きました。
1960年代の写真表現は、カメラ雑誌の写真もJRPの写真も撮り方などは変わらないように見えていました。写真学校の若い写真学生は当時の写真表現には不満な気持ちを持ち、JRPの写真を批判することが60年代の写真を批判する事になっていました。私は同世代からも悔しくなる程の批判を受け、本当のリアリズムはそうではないのだという思いを持ちながら自分のリアリズムを追い求めるしかないと考えていました。
私は基本的に不器用で、自分が良いなと感じた事しか撮れず、うまく画面をまとめて写真にすることが出来ませんでした。要するに私の写真は主観的な写真という事になります。リアリズムというと主観を排しなければいけないといわれ、その通りだと考えていました。またそのことでは、写真の世界を厳しく生きて来られた英伸三先生に見ていただいている教室では、特に客観性については厳しいものがありました。私だけが思っていたことかもしれませんが、私自身は客観に耐える主観で撮らなければと考えていました。2015年に徳島に帰郷して傾斜地集落を撮影していますが、今でもそういう気持ちで撮影しています。
私の20代から30代半ばまでお世話になっていた英伸三先生にこのような受賞の言葉をいただき、自信と喜びになりました。

個人会員 小倉 隆人

 

写真活動

特別賞 三重支部機関誌『百万石』

■ 受賞理由

三重支部は機関誌「百万石」を40年以上発行している。2023年5月で1189号となった。
毎号例会や撮影会、投稿写真と文、写真展の取り組み、写真とそれをめぐる討論、意見が掲載され、支部と会員の写真の動向が誰にも 伝わるように編集されている。近年は PDFで、全国のJRP会員はじめ、視点応募者や支部展の閲覧者にも多数配信されている。この取り組みによって、写真を支部の内部に閉じ込めることなく、多くの人に見てもらう場となり、会員の写真内容を豊かにし、会員の拡大にもつながっている。「百万石」 の命名者の東洋介さんは「写真は好きである以上に楽しくなくてはならない」という言葉を残したが、会員の写真に取り組む楽しい素顔が見えるところがこの機関誌の素晴らしいところである。編集者と支部会員の尽力を讃え特別賞を贈ります。

代表理事 金瀬胖

■ 受賞のことば

三重支部機関紙『百万石』が2022年度JRP年度賞・特別賞に選ばれたそうで、どうもありがとうございます。とてもうれしく思っています。
『百万石』は故・東洋介さんが創刊し、長年にわたって自ら編集・発行を続けておられました。当時はコンピュータはなく、ファックス輪転機の時代、もちろん全部手書きでした。やがてワープロ専用機が普及し、現在ではコンピュータで編集しプリンタで出力、またはメールで配信という便利な時代になりました。
東さんの後も、支部会員有志によって編集・発行が引き継がれ、40年以上もの歴史を刻みました。現在は烏谷俊江さんが編集・発行をしてくれておりますが、今、怪我で入院中ですので、私(中西)が代理で書かせていただきます。
『百万石』という名称の由来を少しご紹介させていただきますと、この名称は、
「三重支部会員を100名にしよう!」
という東さんの提唱がきっかけでした。当時JRPの会費は一万円でしたから、会員が100名になれば百万円の会費が集まることになります。
百万円 → 百万石!
さらに、当時人口100万人ちょっとの三重で100名の会員、この比率を全国に適用しますとJRPの全国会員数は1万人になります! すると10000×10000=一億円の年会費収入! これだけの年会費が集まれば「JRPビル」が建てられますね!
そんなことを「百万石の初夢」というエッセイに、東さんは書いておられたのでした。
東さんのこの提唱に応えて全会員が会員拡大に奮闘、三重支部会員は70名にまで増え、全国一の支部になりました(残念ながら100名には至りませんでしたが…)。
現在三重支部会員はたったの20名、時代の流れとはいえさみしいかぎりです。しかし、現在のJRP会費は二万円ですから、三重支部会員が100名でなくとも、50名になれば「百万石」になります! これなら可能性があるかもしれません。がんばりたいと思います。
支部の機関紙について東さんが述べておられたことをご紹介します。
私が機関紙編集を担当していたころ、記事が集まらないと自分の文で紙面を埋めてしまうことがよくありました。そんなとき東さんは、
「自分の文で紙面を埋めるのはカンタンやけど、それでは機関紙の役割を果たさないよ。できるだけ多くの人に原稿を書いてもらうことが大事。『原稿集め』こそが編集長のいちばん大事な仕事なんや」と、よく諭されたものでした。仕事などで例会に出られない人、写真から遠ざかっている人…そういう人たちにこそ書いてもらわなければ…と。
『原稿集め』こそが編集長のいちばん大事な仕事
これは機関紙の役割についての東さんの考え方をよく示していると思います。機関紙は支部の会員と会員を結びつける絆の役割を果たさなければならない、ということですね。
ともあれ、すばらしい賞をいただきありがとうございました。今回の受賞、東洋介さんも「あちら」でとても喜んでおられることと思います。

三重支部 中西 篤行

 

2021年JRP年度賞

該当者なし

 

2020年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 長崎支部  『長崎の証言』増補改訂版

年度賞 小林光子 『93歳の光子通信』

年度賞 中西篤行 『伊勢 一榮一落是春秋』

 

2019年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 沈輝・長谷川由美子 『棚田の民・中国貴洲省の苗族』

 

2018年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 廣田一雄  『大須遊歩』

年度賞 江幡芙美江 『アジア群像』

特別賞 山本やす子 『出羽歩き』

特別賞 久保村厚 『隣の田圃』

 

写真活動

特別賞 なにわ写心支部

 

2017年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 増田康雄 『多摩の戦争遺跡』

年度賞 本郷 浩 『荒浜』

特別賞 徳島支部 『四国三郎とその流域』

 

2016年JRP年度賞

該当者なし

 

2015年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 鵜沼 享 『REMEMBER TAKASHIMA』

特別賞 北村富士郎  『信州小谷のロマン展』

 

写真活動

特別賞 京都支部

 

2014年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 山口 保 『時軸』

特別賞 高橋廸子 『育ちゆく力』

特別賞 廣田一雄 『日曜写真劇場』

 

2013年JRP年度賞

写真活動

  • 奨励賞 城台巌
  • 奨励賞 奈良支部

 

2012年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 菊池和子 『命の限り』

年度賞 勝谷寛子 『長春を歩く』

特別賞 浅見裕子 『沖縄 道ジュネー』

特別賞 辻 潤治 『6×6判写真帳』

特別賞 足立君江 『カンボジアの子どもたちの肖像』

 

写真活動

特別賞 東村山支部

 

2011年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 岡田満 『神々の森』

 

写真活動

特別賞 仙台支部

 

2010年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 鈴木一記 『井の国 棚田と伝承の国』

 

写真活動

特別賞 茨城支部

 

2009年JRP年度賞

個展・出版物

年度賞 浅見裕子 『白線流し』

特別賞 黒田勝雄 『浦安」

 

写真活動

特別賞 八木正司

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